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アルビノ
ほんとの気持ちはどれだろう。
今朝はまたぐっと冷え込んだ。
厚手の靴下のせいでスリッパが窮屈になる。
それが脱げないようつっかけながら階段を下りる。
コーヒーを入れていると横から今日もガタガタを音がする。
私はそれを無視してさっさとこたつへ入る。

おはよう

いつものように、それに話しかけた。
私はまだ妻が死んだことを信じられず、
しかしもう彼女はいないと認めない訳にはいかず、
結局のところ彼女の写真をこたつに置くしかなかったのだ。
小さい枠の中で微笑む妻はまだありありと感じられる。

テレビをつけると、豪雪に注意すべき地域が読み上げられていた。
このあたりはさほどひどくないそうだ。
雪は孤独に、閉鎖的に、そして家庭的な気持ちにさせる。
今はそれがとても幸せに感じられた。
彼女と二人きりにさせてくれるからだ。

体が抵抗するが時計に逆らえず、
のそのそと朝食を作る。
と言っても不精な一人者の朝食である、
レタスと魚肉ソーセージ、あとは白米に生卵をかければ十分である。
外葉は捨てない。
私は野菜が好きだが、固いものやえぐみのあるものは好まない。
が、それは別に役割を持っていた。

がたがたとまたケージをゆらす茶色の獣にそれを与えた。
彼は少し匂いを確かめ、
微かな音をたてながら噛り付いた。
兎は別に好きな訳ではない。
犬や猫ならまだ愛着が湧くが、兎は特に魅力を感じる対象ではなかった。
しかし生き物を捨てるというのにも、
彼女を知る存在を手放すのにも抵抗があった。

暫くテレビを見ていたらいつの間にか彼は食べ終えていた。
また催促されるだろうと思った。
彼女は欲しがられたら幾らでもやってしまうから、
こいつはぶくぶくとここまで太ったのだった。
が、いつまで経っても何も言ってこない。
丸まって寝息をたてだした。

私は一度も追加してやらなかったが、
こいつは毎日催促していた。
だが今日はそうではなかった。
学んだのだ。
いくら欲しても何も出てこないと。
或いはもっとくれていたことを忘れてしまったのだろうか。

私は兎にさえ置いていかれた気持ちになった。
彼女は、
沢山の葉をくれた彼女は、もういないのだ。
私も学ばなくてはいけない。
思い知らされなくてはいけない。

すっかりぬるくなった一口分の残りのコーヒーを飲み干し、背広を羽織った。




久しぶりの小説です。
(実はちょっと前に短いものを載せましたが^^;)
一発書きなので後で訂正入るかもしれません。


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